(京極町史 854p)

 
甲斐高台からの眺望
 
 羊蹄山をめぐる景勝地として、新しくもう一つ登場したのは、甲斐の高台である。
 海抜400m余のこの地区は、明治41年155戸の山梨県民大集団移住地で上山梨といわれた所である。昭和16年字名改正によって「甲斐」として、故郷の名を残したが今はまったく無人の地となった。元の上山梨の部落集会所前に“山梨団体移住記念標”(移住10周年の大正6年に建てたもの)が残っていることがわかり、この辺一帯の竹やぶをきり開いた町の手で、50余年ぶりで記念碑は陽の目をみることになった。
 この記念碑の位置からは羊蹄の北側を真正面にみてすばらしい。かつて山梨の移住者はこの羊蹄を朝夕に眺めて故郷をしのんだという。故郷の富士にそっくりの羊蹄山があるから、移住地を倶知安(当時倶知安村)にきめたと伝えられている。
 また西南のニセコ、東南の尻別岳も大富牧場からみるのとはちがった趣きがある。さらに東にはムイネの連峯も観賞できる。
 ここ甲斐の高台に立てば、その美しい風光とともに、盛衰70年の山梨団体がしのばれる。